鼻中隔延長術|手術の詳細
鼻中隔延長術とは、鼻中隔に軟骨を移植することによって鼻を希望の長さや角度に延長する手術です。延長する材料はご自身の軟骨です。
軟骨は、胸から採る肋軟骨、鼻の奥から採る鼻中隔軟骨、または耳から採る耳介軟骨の3種類があります。しっかり延長したい時は肋軟骨が必要になります。延長量が控えめな時は鼻中隔軟骨もしくは耳介軟骨で手術可能です。
耳介軟骨を使用するときは、曲がりの矯正や補強のためにメドポアを用います。メドポアとは、アメリカ製の人工骨で、体に吸収されません。
鼻中隔軟骨には補強するために保存軟骨を使うことがあります。保存軟骨とは、人体から採取した軟骨を薬品処理し、菌やウイルスの感染、また拒絶の心配をなくした製品です。保存軟骨は1年程で吸収されることがありますが、ほとんどの例では1年以上残っています(硬さは弱くなってきます)
■ 鼻中隔延長術
【麻酔方法】
全身麻酔
鼻中隔延長術|ダウンタイム・術後経過
【ダウンタイム】
個人差があります。
■ 腫れ
術後1 週間はギプスを装着するため、表からは見えません。
2~3 日目をピークに約7 日~10 日間程で目立つ腫れはひいていきます。
内出血や感染症が起きた場合は、腫れが長引くこともあります。
■ 内出血
起こらないこともありますが、起こってしまった場合約1~3 週間皮膚が紫色や緑色になります。
■ ドレーン(管)
出血が皮下にたまるのを防ぐ為に1~3 日間鼻内に留置することがあります。
抜く際に鼻の粘膜から出血することがあります。
■ ギプス
約1 週間 その後は2~4 週間就寝時のみ装着。
■ 抜 糸
約1週間後に鼻の表面、約2週間後に鼻の穴の中を抜糸します。
■ メイク
治療箇所以外はメイクが可能です。1 週間目の抜糸後からは全体にメイクが可能です。
■ 通 院
1 ~3日目・1 週目・2 週目
【治療後の経過】
1、むくみ
ギプス抜去後は一時的にむくみが生じます。そのため「長すぎる」「高すぎる」「太すぎる」と感じることがあります。時間の経過とともに落ち着き4~6 ヶ月程経つとスッキリ見えてきます。
2、傷
数ヶ月は傷の赤みがあり、その後時間の経過と共に除々に薄茶色(色素沈着)から白っぽい線に変化します。3~6 ヶ月は傷が硬くなりますが、除々に硬さは改善されます。
3、完成
約4~6 ヶ月
鼻中隔延長術|手術後に起こりうるトラブル・対応
【喫煙について】
喫煙は血液の循環を悪くする為、傷の治りが悪くなります。細菌がついて感染を引き起こす原因にもなります。
術前2 週間前~術後最低1 ヶ月は禁煙をお願い致します。
手術後4 ヶ月は腫れや炎症が残っているため、傷が酷く残りやすく、また癒着が強く変形が起きやすいため、原則として再手術には適さない時期です。腫れや炎症が治まる4 ヶ月以降に判断し、調整を行わせていただくことをご了承下さい。
鼻中隔延長術|トラブル一覧
A) 感 染(化膿する)
B) アレルギー反応(異物反応)
C) 血が溜まる
D) 傷口が開く
E) 糸が出てくる
F) 鼻の穴の左右差
G) 鼻尖の曲がり
H) 鼻の穴のひきつれ
I) 鼻尖の違和感
J) 鼻柱(鼻の穴と穴の間)が分厚くなる
K) 鼻柱が凸凹する
O) 延長した鼻が長すぎる・鼻尖が高すぎる
P) 延長した鼻が短すぎる・鼻尖が低すぎる
Q) イメージと違う
A) 感 染(化膿(かのう)する)
A-1トラブルの内容
手術後、皮膚の赤み・熱感・痛み・腫れが増し続けたり、その状態が長引く場合は、感染が疑われます。
A-2 対応
感染が起きた場合は、内服薬の服用、抗生剤点滴の投与を2週間続けて経過をみます。膿が溜まっている時は、鼻の中を切開して洗浄を行います。それでも治まらない場合は、移植した軟骨を除去します。
再度、延長術を希望される場合は、感染の原因となる細菌が完全に消えてからになりますので、少なくとも軟骨除去後4ヶ月経過してからとなります。
再手術の際は、すでに鼻中隔軟骨を摘出してしまっているため、ほとんどの場合、肋軟骨を使用し移植します。
B) アレルギー反応(異物反応)
B-1トラブルの内容
実際に起きた経験や報告はありませんが、保存軟骨に対する異物反応が起こる可能性は否定できません。
B-2 対応
異物反応が起きた場合には、軟骨を除去する処置を致します。
C) 血が溜(た)まる
C-1トラブルの内容
術後に傷の中で出血が起こりますと、皮膚の下に血が溜まって、鼻先、鼻柱、鼻の中粘膜が紫色に腫れあがります。
血液が溜まったままにしておきますと、感染、鼻尖が太くなる、鼻づまりを起こす危険がありますので、早めに治療をする必要があります。
C-2 対応
血が溜まっている場合は、直ちに溜まった血を注射器で吸い出すか、もう一度傷を開けて排出します。
D) 傷口が開く
D-1トラブルの内容
稀に糸が外れたり、傷口の治りが悪く傷口が開いてしまうことがあります。
D-2 対応
糸が外れ傷口が開いてしまった場合には、もう一度傷を縫い合わせる処置を致します。
E) 糸が出てくる
E-1トラブルの内容
軟骨と自己組織を縫い合わせる糸が露出することがあります。
E-2 対応
放置していると化膿する危険がありますので早めにご来院下さい。糸を取り除く処置をさせて頂きます。
F・G) 鼻の穴の左右差・鼻尖の曲がり
FG-1トラブルの内容
延長手術をすることで、引き延ばされた皮膚や鼻尖の軟骨が元に戻ろうとする為、延長した軟骨に力が加わり曲がってしまうことがあります。
当院のこれまでの症例では、鼻尖が左右に傾くことが10%程度、また、鼻の穴の左右差が20~30%の割合で認められました。延長量が多くなるほど、また、過去に鼻の手術を受けている方ほど、起こりやすい傾向にあります。術前に左右差がある場合、90%の割合で左右差は残ります。
F・G-2 対応
修正を希望される場合は、移植した軟骨を削って延長量を短くしてバランスをとる処置をさせて頂きます。但し、延長した鼻が短くなることをご了承下さい。延長した長さを短くしないで傾きの修正を希望される場合は、更に強力な軟骨を移植する必要がありますので、肋軟骨を採取して移植する処置をさせて頂きます。
※ 但し、修正手術を行っても完全に左右差をなくすとは困難なことをご理解下さい。
H) 鼻の穴のひきつれ
H-1トラブルの内容
鼻の穴の中の切開した傷が拘縮してひきつれることがあります。特に、再手術や感染が起きたケースでは、ひきつれも起こりやすくなります。
H-2 対応
術後半年を経過して傷跡が柔らかくなると、鼻の穴のひきつれも改善します。
それでもひきつれが残った時には、皮膚を移植する治療をさせて頂きます。
I) 鼻尖の違和感
I-1トラブルの内容
延長手術をしたことにより、鼻尖が固定され手術前のように動かなくなるため、違和感を感じることがあります。特に、笑った時に気になります。
I-2 対応
どうしても気になる場合には、延長した軟骨を除去致します。
J) 鼻柱(鼻の穴と穴の間)が分厚くなる
J-1トラブルの内容
延長手術で軟骨を移植したことにより、鼻柱(鼻の穴と穴の間)が分厚くなることがあります。
J-2 対応
修正を希望される場合は、移植した軟骨を削る処置をさせて頂きます。
※但し、削ることにより、鼻が短くなる、また、鼻尖が傾きやすくなる可能性があることをご了承下さい。
K) 鼻柱が凸凹する
K-1トラブルの内容
鼻の穴の鼻柱の部分に(鼻柱の側面)に膨らみが出来る事があります。
K-2 対応
元々の鼻尖軟骨の折れ曲がりが表面に出る・移植した軟骨の角が出っ張る・キズアトが硬く膨らむことが原因です。軟骨が原因の場合は、膨らんで見える余分な軟骨を切り取る事で改善されます。
L) 鼻閉感(鼻が通りにくい感じ)
L-1トラブルの内容
鼻づまり原因は、鼻の中の粘膜が腫れるため、鼻の通りが狭くなることによります。通常1~3ヶ月ほど経過すると粘膜の腫れが治まって改善されます。他の原因として、鼻中隔に軟骨を重ねるため鼻中隔が厚くなることや、鼻先が高くなって鼻の穴が縦長になるため鼻の中の空気の通るスペースが狭くなることがあります。鼻尖縮小術を併せて行うと、更に鼻の中のスペースが狭くなるため鼻づまりが起こりやすくなります。
もう一つの原因は、延長した軟骨に力が加わって曲がってしまい、一方あるいは両方の鼻の中の通気スペースが狭くなるためです。
L-2 対応
術後早期の鼻づまりは、粘膜の腫れが主な原因ですので、市販の鼻炎スプレーを使用いただくと、鼻づまりが軽くなります。
半年以上経過しても鼻づまり症状が残った場合には、移植した軟骨を部分的に削る処置をさせて頂きます。
軟骨の彎曲に対しては、上記 F)・G)に準じます。
延長のために移植した軟骨を一部削る手術を行っても、鼻詰まりが完全には治らないことがあります。移植した軟骨をすべて取り除く処置は鼻づまりを改善する効果が高いと予想されますが、この処置を行うと術前と同じか、それよりも短い鼻先になる可能性があることをご理解ください。
M) 移植軟骨の輪郭が浮き出る
M-1トラブルの内容
延長手術によって鼻尖の皮膚が引き伸ばされて薄くなるため、鼻尖の軟骨の輪郭が浮き出ることがありますが、軟骨が皮膚を突き破って飛び出てくることはありません。
M-2 対応
「移植軟骨の輪郭が浮き出てきてしまった」 「鼻先に赤味がでてきた」 「鼻先が白く変色してきた」等の症状が起こった場合は、鼻尖の軟骨を部分的に削るか除去することで改善できます。
しかし、薄くなってしまった皮膚が厚みを取り戻すことはありません。皮膚の厚みを回復するためには、お尻から真皮脂肪(皮膚の一部)・または、保存真皮(人体から採取した皮膚を薬品処理し、菌やウイルスの感染、また拒絶の心配をなくした製品。海外から輸入)を移植します。
N) 傷跡が気になる
N-1トラブルの内容
肌の性質により、傷跡がケロイドのように赤く盛り上がったり、段差や凹みなどが起こる場合があります。
N-2 対応
キズアトの修正を希望される場合、下記の方法を用いて改善を図ります。
◆ ステロイド注射(ケナコルト)
赤く盛り上がったキズを平らにする効果が期待できます。
効果が出るまで、1ヶ月に1回の治療を繰り返す可能性があります。
また、ステロイドの副作用として、皮膚や傷が凹む、細かい血管が浮き出るといったことがあります。
◆ CO2レーザー照射
キズアトの段差を削って、なめらかにする効果があります。処置後は3ヶ月程赤みがあります。
◆ 切開法
傷の赤みが消えたうえで再度、切開し縫合いたします。
※ 傷を完全になくす事は不可能であり、目立たなくするという目的であることをご了承下さい。また、個人の体質的な要因が大きいため、キズアト修正には限界がありますことをご理解下さい。
O) 延長した鼻が長すぎる・鼻尖が高すぎる
O-1トラブルの内容
できるだけ患者さまのご希望に叶うよう、鼻の延長方向と延長量を相談して決定します。しかし、予定した延長量より多少大きくなってしまうことがあります。また、予定通りに延長しても、仕上がった鼻が長く、高く感じることもあります。
術後3~6ヶ月はムクミのために大きすぎると感じることが少なくありません。むくみが落ち着くまで6ヶ月程経過を見ていただく必要があります。
O-2 対応
高すぎる、あるいは長すぎる鼻を修正したいとご希望の場合、手術後1週間後もしくは4ヶ月以降に移植した軟骨を部分的に削ることで調整することが可能です。
延長術を元に戻したいとご希望の場合、移植した軟骨をすべて取り除きます。結果として、延長された鼻先は短くなりますが、術前と全く同じになるとことは補償できません。術前よりも短く・低くなってしまうこともあります。
P) 延長した鼻が短すぎる・鼻尖が低すぎる
P-1トラブルの内容
できるだけ患者さまのご希望に叶うよう、鼻の延長方向と延長量を相談して決定いたします。しかし、軟骨の大きさや皮膚のつっぱりのため、十分な高さや長さを得られないことがございます。また予定通りの延長をすることができても、仕上がった鼻が低い、短いと感じることもございます。
P-2 対応
まだ短い、物足りないと感じる場合、皮膚に余裕があれば、手術後1週間後もしくは4ヶ月以降に鼻尖に軟骨を追加移植し、延長することが可能です。肋軟骨採取が必要な場合もあります。
※さらに長さ・高さを出す為には、引き延ばされる鼻尖の皮膚に余裕があることが条件となります。その為、修正できる範囲には限界があることをご了承下さい。
皮膚に余裕ができるように初回手術から1年以上経過を待ってから再手術を受けられることをおすすめします。
Q)イメージと違う
Q-1トラブルの内容
延長手術が予定通り成功しても出来上がった鼻の印象が期待していたイメージと違うと感じる場合があります。鼻尖の長さや向きを変えても、完全にご希望通りの鼻にする事はできないことをご理解下さい。
Q-2 対応
正を希望される場合は、可能な範囲で、鼻尖の高さや長さや角度を修正致します。必要に応じて耳の軟骨や肋軟骨を採取して移植する必要があります。
- 鼻が長すぎる・高すぎると感じる場合には、O)
- 鼻が短すぎる・低すぎると感じる場合には、P)
の対応に準じます。但し修正手術をしてもご希望通りの鼻にならないことがあることをご了承下さい
R)上口唇の動きが悪くなる
R-1トラブルの内容
鼻柱の付け根に軟骨を固定するためにその部分の肉を骨から剥がします。その際、上口唇を持ち上げる筋肉が骨から剥がされるため筋力が弱くなり、上口唇を持ち上げる動きが悪くなることがあります。また、鼻先を延長するために鼻柱の付け根に移植した軟骨が上口唇の動きをブロックすることがあります。
R-2 対応
3~6ヶ月は筋肉の動きが回復するのに時間が必要ですので、経過を見てください。回復しても、術前に比べて動きが多少悪くなることをご了承ください。鼻柱の付け根に移植した軟骨が口唇の動きを妨げている場合は、鼻尖の形が固まるまで半年ほど待ってから移植した軟骨を部分的に切り取る手術をいたします。延長のために移植した軟骨を一部削る手術をしても、上口唇の動きが完全には戻らないことがあることをご理解下さい。