手術の詳細
挿入していた人工乳腺(じんこうにゅうせん)を抜去(除去)後、新たな人工乳腺(シリコンバッグ)に入れ替える手術です。
バッグの挿入位置は、「乳腺下法(にゅうせんかほう)」・「筋膜下法(きんまくかほう)」・「大胸筋下法(だいきょうきんかほう)」があります。
前回と同じ深さに挿入するのか、違う深さに挿入するのかを選択することが来ます。
基本的には、以前の豊胸手術のキズアトと同じ箇所(ワキの下の場合が多い)から入替させて頂きます。
希望するバストの大きさや状態{被膜拘縮(ひまくこうしゅく)やしこり等}によっては、キズアトとは別の箇所{乳房下縁(アンダーバスト)が多い}を切開することをお勧めする場合もあります。
■ 手術の流れ
【麻酔方法】
全身麻酔
ダウンタイム・術後経過
【ダウンタイム】
個人差があります。
■ 腫れ
約7~14 日間(ワキ~胸全体に出ることもあります。)
内出血や感染症になった場合、腫(は)れが長引くこともあります。
■ 内出血
手術操作によって細かい血管が傷つくと皮膚の下で出血し、ワキの切開部~胸全体が紫色になりますが、2~3 週間で消失します。
■ 抜 糸
6~8 日後
■ ドレーン
術後の浸出液や血液をバストの中に貯めずに、外に排出させるための管を付けます。
通常は、2~3 日程で抜去となります。
■ 圧 迫
アップ帯という包帯を2~3 日装着します。
その後、抜糸までは、取り外し可能なバストバンドにて、圧迫を継続します。
■ ブラジャー
術後3 ヶ月は、ワイヤー入りブラジャーの着用を控えていただきます。
(スポーツブラや柔らかいタイプの物を使用)
■ 通 院
1 日目・2 日目・3 日目(4 日目~)・7 日目
■ 完 成
約6 ヶ月
【ダウンタイム後の経過】
1. 胸
○ 腫れやムクミにより、一時的に胸が大きすぎる、または左右差を感じることがありますが、時間と共に馴染んできます。
また、大きなサイズに入れ替えた方で、皮膚に伸びる余裕の少ない場合、術後しばらくはつっぱり感が強く、丸みのないバストのように感じますが、3 ヶ月程すると皮膚が伸びて、丸みのあるバストへ変化していきます。
○ 手術後一時的に胸の感覚が鈍くなりますが、数ヶ月かけて徐々に改善します。
○ 手術後は状態が落ち着くまでの間、強い刺激によって痛みを感じることがあります。
徐々に軽減されますが、痛みが強い間は出来るだけ刺激を避けてください。
○ ワキから手術を行った場合は、ワキから胸にかけて つっぱり感が生じる・ワキから肘にかけて、筋がつっぱるなどの症状が出る事があります。ストレッチなどを行って頂くことで、徐々に馴染んでいきます。
2. 加 齢
手術後もバストの位置が下がる、ボリュームが減るなど、加齢による変化は引き続き起こります。
3. 切開部の傷跡
傷の赤みは数ヶ月かけて、薄茶色(色素沈着)から白っぽい線へと変化し改善します。
4. その他
手術後、バストの組織がやわらかくなるのを促進する目的で、高周波での治療を行なわせて頂きます。
通常1 週間に1 回のペースで5 回行います。
手術後に起こりうるトラブル・対応
【喫煙について】
喫煙は血液の循環を悪くする為、傷の治りが悪くなります。細菌がついて感染を引き起こす原因にもなります。
術前2 週間前~術後最低1 ヶ月は禁煙をお願い致します。
手術後4 ヶ月は腫れや炎症が残っているため、傷が酷く残りやすく、また癒着が強く変形が起きやすいため、原則として再手術には適さない時期です。腫れや炎症が治まる4 ヶ月以降に判断し、調整を行わせていただくことをご了承下さい。
トラブル一覧
A) バストの位置が高すぎる(外側や内側の広がりが足りない)
B) バストの位置が低すぎる(外側すぎる・内側すぎる)
C) 希望のサイズでない
D) バストの左右差(位置のずれ・大きさの違い)
E) バッグの輪郭が浮き出
F) 被膜拘縮(ひまくこうしゅく)(カプセル拘縮)
G) 胸の中でバッグが動く
H) 傷 跡
I) シリコンバッグの破損
J) 胸部の感覚麻痺
K) 感 染(化膿する)
L) 血が溜まる
M) 傷が開く
N) 中縫いの糸が出てくる
O) テープかぶれ
A) バストの位置が高すぎる(外側や内側の広がりが足りない)
A-1トラブルの内容
バッグを挿入するためのスペースの剥離が不十分であったり、バッグがスペース内の高い位置に固定されたりすると、バストの位置が高くなってしまいます。
A-2 対応
バストの位置が高すぎる場合は、バスト位置を下げる為に、バッグの入っているスペースを下方に広げる処置を行わせて頂きます。術後1 週間後に明らかに位置が高すぎると判断した際は、すぐに処置を行わせて頂きます。
術後1 週間以降に高すぎたと判断した際は、4 ヶ月以上経過を待ってから処置を行います。
B) バストの位置が低すぎる(外側すぎる・内側すぎる)
B-1トラブルの内容
バッグを挿入するためのスペースが下方に広がり過ぎると、バストの位置が低くなってしまいます。
B-2 対応
バストの位置が低すぎる場合、バッグの入っているスペースの下側を狭くする必要があります。そのため下記のような方法で改善を図ります。
◆ 糸で固定
好ましいアンダーバストのラインに合わせて、狭くする範囲を糸で固定し、剥離され広く開いたスペースを癒着させ、小さくします。
術後1 週間後に明らかに位置が低すぎると判断した際は、皮膚の表から大きな針で糸を通して皮膚を胸壁の筋肉に固定します。そうすることで、広く剥離されたスペースを癒着させて小さくします。
※ この処置により、アンダーバストの糸で固定している場所に、エクボの様な凹みが出来ます。
時間と共に徐々に馴染んでいきますが、6 ヶ月程続くこともあります。
◆ バッグの抜去・再挿入
一旦バッグを抜去し、4 ヶ月程待って頂くと、バッグを入れていたスペースが癒着し、元の状態に戻ります。その後に、再度バッグを挿入します。
C) 希望のサイズでない
C-1トラブルの内容
手術後3 ヶ月程はむくみのため、バストが大きく見えます。手術前に豊胸後のバストの大きさや形を正確に予測することは出来ません。そのため手術後、希望のサイズではないと感じることはあります。
C-2 対応
希望のサイズでないと感じた場合、バッグの入替を行い調整いたします。
※ただし、サイズアップの場合、バッグの輪郭が浮き出る・被膜拘縮(ひまくこうしゅく)・感染の可能性が高くなるなどのリスクも伴います。また、体型・手術時の状態によっては、それ以上大きなサイズのバッグへの入れ替えが、難しい場合もあることをご了承ください。
D) バストの左右差(位置のずれ・大きさの違い)
D-1トラブルの内容
バストの位置や大きさの左右差は、元々のバストの大きさや形・位置の違いによることもありますが、バッグを入れた際の位置のズレなどによることもあります。
D-2 対応
バストの左右差が気になる場合は、状態により上記 A) B) C) に準じて行わせて頂きます。
E) バッグの輪郭が浮き出る
E-1トラブルの内容
元々、バストが小さい方や、皮下脂肪が少ない方は、シリコンバッグの輪郭が浮き出て見えてしまうことがあります。また、姿勢によってはバッグが折れてバッグにシワが入り、そのシワのラインが浮き出ることがあります。
E-2 対応
バッグの輪郭が浮き出た場合、バッグの周りに、ご自身の脂肪やヒアルロン酸などで膨らみをつけるか、小さなサイズのバッグに入れ替えるなどの対応をさせていただきます。
F) 被膜拘縮(カプセル拘縮)
F-1トラブルの内容
異物であるバックを入れることにより、免疫反応によってバッグ全体に膜が出来ます。その膜が縮むと、硬くなり、不自然な形になることがあります。
F-2 対応
被膜拘縮が起こる確率は5%程度と低いのですが、被膜拘縮を起こした場合、バッグを抜去するか、被膜を切除してバッグを入れ替える手術をご提案させて頂きます。
バッグを入れ替える場合、被膜の切除を確実に行うため、乳房下縁(にゅうぼうかえん)(アンダーバスト)に切開を加える必要がありますことをご了承ください。
※ 被膜拘縮が起こる原因はいろいろありますが、体質も原因の一つですので、入れ替えを行っても、再度、被膜拘縮を起こす可能性がありますことをご理解ください。
G) 胸の中でバッグが動く
G-1トラブルの内容
バッグを入れる為に作ったスペースの中でバッグが回転したり、ひっくり返ることがあります。
G-2 対応
胸の中でバッグが動いた場合、マッサージを行ってバッグを正しい位置に戻す処置を行わせて頂きます。上記の方法で改善されなかった場合は、再度切開を行い、修正させて頂きます。
H) 傷 跡
H-1トラブルの内容
傷跡が赤く盛り上がる、幅が広くなる、色素沈着、凹むなど、傷跡が目立つ場合があります。
H-2 対応
傷跡が気になる場合、状態に合わせて下記の方法を用いて改善を図ります。
◆ ステロイド(ケナコルト)注射
※ケロイドのように赤く盛り上がったキズを平らにする効果が期待できます。
十分な効果が得られるまで、1 ヶ月に1 回の治療を繰り返す可能性があります。
ステロイドの副作用としては、傷が凹む、毛細血管が浮きでるといった事があります。
◆ クリーム治療 ※色素沈着によって傷跡が目立つ場合
● ハイドロキノンクリーム ※色素を薄くします。
● トレチノイン+ハイドロキノンクリーム ※肌のターンオーバーを早め、新たな皮膚を再生させます。
◆ 切開法
① キズアトの凹(へこ)みは、ワキの傷とバストの傷が繋(つな)がり、引っ張られている事が原因です。
その際は、再度傷を切開し、癒着(ゆちゃく)をはがす処置を行わせて頂きます。
② キズアトの幅が広がってしまった場合は、術後4 ヶ月以降、傷の赤みが消えたうえで、再度切開し、キズアトを切り取り、丁寧に縫い直します。
I) シリコンバッグの破損
I-1トラブルの内容
手術中、バッグを傷口から引っ張り出す時に破れてしまうことがあります。術後に入れ替えたバッグが破損することは非常に稀なことですが、非日常的な力が加わることによって破損する可能性は否定できません。
I-2 対応
バッグが胸の中で破損した場合、バッグを抜去、又は入替を行います。
出来る限り、バッグの破片と中身のシリコンジェルをかき出しますが、多少体内に残ってしまう可能性がありますことをご理解ください。
また、もともと、胸の組織とバッグの癒着が強い場合、ワキからの手術ではバッグの破片をきれいに取りきれない可能性もあります。
残ったバッグの破片を全て取り除く事を希望される場合、アンダーバストに沿って切開し、バッグの破片を除去します。
J) 胸部の感覚麻痺
J-1トラブルの内容
手術中にバストの知覚神経が引き伸ばされるので、バストの皮膚や乳輪・乳頭の知覚が鈍くなることがあります。
J-2 対応
基本的には、時間とともに徐々に感覚が戻ってきます。ただし、日常生活には問題ない程度ですが、完全には回復しない場合もあります。
K) 感 染(化膿(かのう)する)
K-1トラブルの内容
赤み・痛み・腫れ・熱感が増したり、長く続いたりする場合は、感染が疑われます。
K-2 対応
感染が起こりそのまま放置すると、菌が全身に広がり、高熱が出たり、胸の皮膚が破れて膿が外に出てくることもあります。
そして、皮膚が破れた後にはキズアトが残ってしまうため、感染が起きた時には皮膚が破れる前に早急な処置が必要となります。
基本的に、内服薬の服用や抗生剤の投与2 週間続けて経過を見ます。それでも改善しない場合、バッグの抜去が必要となります。ただし、状態によっては、早急にバッグを抜去しなければならない場合もあります。
抜去後の再挿入の時期は、少なくとも抜去手術から4 ヶ月経過した後(感染の原因となる細菌が完全に消えてから)となります。
L) 血が溜まる
L-1トラブルの内容
術後に傷の中で出血しますと、血が溜まって胸部が紫色に腫れ上がります。血が溜まったままにしておきますと、感染やしこりを作る恐れがあります。
L-2 対応
出来るだけ早く処置をする必要があります。その際は再度傷を開け、溜まった血液を排出します。
M) 傷が開く
M-1トラブルの内容
稀に糸が外れて、傷が開いてしまうことがあります。
M-2 対応
傷が開いた場合は、再度縫合いたします。
N) 中縫いの糸が出てくる
N-1トラブルの内容
皮膚の下の組織を縫い合わせている糸(中縫いの糸)が出てくることがあります。
N-2 対応
皮膚の下の組織を縫い合わせている糸(中縫いの糸)が出てくることがあります。
そのままにしておくと化膿する恐れがありますので、早めに来院して頂き、抜糸を行なわせて頂きます。
O) テープかぶれ
O-1トラブルの内容
キズ口を保護するために、キズの上にガーゼをあててテープで止めさせて頂きます。肌の弱い方は、テープかぶれが起こって水疱ができることがあります。
O-2 対応
通常、1 週間程で水ぶくれは破れて治ります。その後、色素沈着になることがありますが、その場合は、シミ取りのクリームを処方させて頂きます。