上下顎前突|術後に起こりうるトラブル・対応

手術の詳細 ダウンタイム・術後経過 術後に起こりうるトラブル・対応

上下顎前突|治療法の詳細

上顎(じょうがく)いわゆる出っ歯、または下顎(かがく)いわゆる受け口、もしくは上下顎(じょうげがく)ともに前方に突出している場合に、口の中を切開し4番目か5 番目の歯を抜歯し、歯茎の骨を切って後方へ移動させる手術です。前歯の位置を下げて出っ張った口元を整えます。
 
 
■ 上顎前突(出っ歯)
 
 
上顎前突:切開位置


上顎前突:1本抜歯と骨きり上顎前突:骨の移動

 
 
■ 下顎前突(受け口)
 
 
下顎前突:切開位置

下顎前突:1本抜歯と骨きり下顎前突:骨の移動

 
【麻酔方法】
全身麻酔
 

上下顎前突|ダウンタイム・術後経過

【ダウンタイム】
個人差があります。
 
 
■ 腫(は)
 
約2 週間(3 日目くらいが腫(は)れのピーク)
内出血や感染症になった場合、腫れが長引くこともあります。
 
 
■ 内出血
 
細かい血管が傷つくと、皮膚の下で出血し、紫色になりますが、1~3 週間で消失します。
 
 
■ 抜 糸
 
口腔内の抜糸を2 週間目にします。
 
 
■ ワイヤー
 
抜いた歯の前後の歯をワイヤーで固定します。ワイヤーは術後3 ヶ月目に取り除きます。
 
 
■ 洗顔・シャワー浴
 
手術翌日から可能です。
 
 
■ メイク
 
手術翌日から可能です。
 
 
■ 歯磨き
 
手術翌日から可能です。傷に直接当たらないように注意して下さい。
 
 
■ 食 事
 
約1~2 週間は固形物を控えて下さい。2 週間はお渡しするイソジンで食後にうがいをして下さい。
 
 
■ 完 成
 
約6 ヶ月
 
 
【ダウンタイム後の経過】
 
1. むくみ
 
3ヶ月~6ヶ月
 
 
2. 傷の経過
 
傷は口腔内のため、外観からはわかりません。術後3ヶ月は傷が硬くなりますが徐々に硬さは改善されます。
 
 

上下顎前突|術後に起こりうるトラブル・対応

【喫煙について】
喫煙は血液の循環を悪くする為、傷の治りが悪くなります。細菌がついて感染を引き起こす原因にもなります。
術前2 週間前~術後最低1 ヶ月は禁煙をお願い致します。

 
手術後4 ヶ月間は、腫(は)れや炎症が残っているため、手術を行うと、傷が汚くなる、癒着(ゆちゃく)が強く変形するなど、原則として手術は行えない時期です。腫れや炎症が治まる4 ヶ月以降に判断し、調整を行わせて頂くことを御了承下さい。
 

上下顎前突|トラブル一覧

 
A) 感染(化膿する)
B) 血が溜まる
C) 傷が開く
D) 口元の痛み違和感
E) 歯茎・歯、口唇のしびれ、痛み、違和感
F) 歯と歯の間に隙間ができる、前歯の噛み合わせの異常
G) 口唇が薄くなる
H) 上口唇が長くなった印象を受ける(上顎前突に限る)
I) 老けた印象になる
J) 小鼻が広がる(上顎前突の場合に限る)
K) 口唇の火傷・すり傷・色素沈着
L) レントゲン・CT・MRIに対する影響
 
 

A) 感染(化膿(かのう)すること)

A-1トラブルの内容
手術後、熱感・痛み・腫れが増す、あるいは長引く場合は感染が疑われます。
 
A-2 対応
感染が起きた場合は、内服薬服用や抗生剤の投与をします。また、感染がひどいケースでは口腔内の傷を切開して膿を出す必要があります。
 
大変稀なことではありますが、骨を固定するための金属(プレートやスクリュー)が感染の原因となることがあります。その際は金属の抜去が必要になります。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

B) 血が溜(た)まる

B-1トラブルの内容
術後に傷の中で出血して血が溜まると口元や頬や顎の周りが紫色に腫れ上がります。血が溜まったままにすると化膿したりしこりを作ったりするので早目の処置が必要です。
 
B-2 対応
口腔内を切開し溜まった血を排出する処置をします。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

C) 傷が開く

C-1トラブルの内容
口の粘膜の傷が開いて歯茎の骨が傷口から露出することがあります。
 
C-2 対応
通常自然に回復します。もし骨が露出したままで傷がふさがらない時は骨を削る処置を致します。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

D) 口元の痛み違和感

D-1トラブルの内容
術後、歯間ワイヤーによる痛みを感じることがあります。できる範囲でワイヤーを調整致しますので、お申し付け下さい。歯の位置が変わったことで、口唇の動きや表情に違和感を感じることがあります。
 
D-2 対応
ほとんどの場合、時間とともに慣れてきて違和感は落ち着きます。1 年程は経過をみていただく必要があります。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

E) 歯茎・歯、口唇のしびれ、痛み、違和感

E-1トラブルの内容
手術操作の際に、骨や粘膜の中を走行する細かい知覚神経を切ることになります。それによってしびれが出現します。また痛みや違和感を感じることがあります。
 
E-2 対応
術後、歯間ワイヤーによる痛みを感じることがあります。できる範囲でワイヤーを調整致しますので、お申し付け下さい。
 
手術操作の際に、骨や粘膜の中を走行する細かい知覚神経を切ることによってしびれが出現する、痛み違和感を感じることがありますが、ほとんどの場合、3~12 ヶ月かけて自然に回復します。
しかし、まれに感覚が完全に元通りには戻らないこともあります。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

F) 歯と歯の間に隙間(すきま)ができる、前歯の噛み合わせの異常

F-1トラブルの内容
抜歯をして手術するため、歯と歯の間に隙間ができたり、上下の前歯の噛み合わせが合わなくなったりすることがあります。
 
F-2 対応
歯と歯の間に隙間ができたり、噛み合わせが合わなくなったりした場合は、歯科での治療(補綴(ほてつ)や矯正(きょうせい))が必要になります。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

G) 口唇が薄くなる

G-1トラブルの内容
口元の骨が後ろに下がりますと、それまで歯で押し出されていた口唇が下がって薄くなります。
 
G-2 対応
薄くなった口唇や口元をふっくらさせるには、ヒアルロン酸注入をおすすめいたします。ヒアルロン酸の効果は永久的なものではありませんので定期的(1 年に1回程度)に繰り返す必要があります。
 
脂肪注入は半永久的な効果を期待できますが正確さにかけ、また満足な結果が得られるまで繰り返す必要があります。その他口唇拡大もしくは皮膚を切り取る上口唇短縮術が効果的です。但し、術前の口唇に戻るわけではないことを御理解下さい。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

H) 上口唇が長くなった印象を受ける(上顎前突に限る)

H-1トラブルの内容
前方に突き出ていた上口唇が後退してまっすぐになるため、上口唇が長くなったように感じることがあります。
 
H-2 対応
上口唇が長くなったように感じる場合は、上口唇短縮の手術をすることで改善します。但し、術前と同じ口元に戻るわけではないことを御理解下さい。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

I) 老けた印象になる

I-1トラブルの内容
口元が後ろに下がることによって、手術前より老けた印象に見えることがあります。
 
I-2 対応
若々しい印象を与えるためには、ヒアルロン酸注入により少し膨らみを出す方法がありますが、持続性に欠けます。
 
脂肪注入は半永久的な効果を期待できますが正確さにかけます。また満足な結果が得られるまで繰り返す必要があります。その他口唇拡大もしくは皮膚を切り取る上口唇短縮術が効果的です。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

J) 小鼻が広がる(上顎前突の場合に限る)

J-1トラブルの内容
手術の際に小鼻のつけ根の肉と骨を剥離(はくり)する必要があります。そのため笑う時に働く筋肉に引っ張られて、小鼻が広がることがあります。
 
J-2 対応
気になる場合は、小鼻縮小の手術をすることで改善します。但し、術前と同じ小鼻の形になるわけではないことを御理解下さい。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

K) 口唇の火傷・すり傷・色素沈着

K-1トラブルの内容
手術のために口を大きく開ける器具を使用しますので、口唇に火傷・すり傷・色素沈着が起こる可能性があります。
 
K-2 対応
ほとんどの場合、自然に回復します。
 
色素を薄くするハイドロキノンクリームや肌のターンオーバーを早め、新たな皮膚を再生させるトレチノイン+ハイドロキノンクリームを必要に応じて処方致します。
 
トラブル一覧へ戻る
 
 

L) レントゲン・CT・MRIに対する影響

L-1トラブルの内容
骨を切った部位や骨を固定する金属製のプレートやワイヤーは画像に移ります。しかしCT やMRI の検査を受けて頂くことに支障はございません。
 
L-2 対応
レントゲン・CT・MRIいずれの検査も問題なく受けていただけますが、固定の金属は写ります。人体に問題なく骨になじみの良い金属を使用しているため、原則的には抜去する必要はないと思いますが、どうしても気になる場合は、手術後4 ヶ月以降に抜去可能です。その場合、再度同じ箇所を切開します。
 
トラブル一覧へ戻る